3月, 2020年

年休付与の賢い方法 5日義務も怖くない! 様々な年休消化の仕方

2020-03-30

年次有給休暇の取得状況

厚生労働省が2019年10月に発表した就労条件総合調査によると2018年の年次有給休暇取得率は52.4%と前年から1.3ポイント上昇しています。取得日数は平均9.4日で大企業ほど取得率が高くなっています。

労働者側の自分の仕事が大変になったり職場に迷惑がかかったりするというためらいも、取得が進まない原因になっているようです。厚労省は2020年に取得率7割を目指すとしていますが目標には遠く、2019年4月からの働き方改革の一環で年5日の有給休暇取得義務付けがされました。

取得促進のための各制度

年休は原則1労働日単位での取得ですが、各社で決まりを作っておけば良く、半日年休も60%以上の企業が利用していますし、計画年休も35%が導入しています。

それぞれの特徴を見てみます。

半日単位年休……労使間の合意により半日年休制度を設け、半日単位で与えることも可能です。年休を半日単位で付与するにあたって就業時間のどの時刻で前半と後半に分けるかは労使合意により決めます。

時間単位年休……年次有給休暇は労使協定により年5日までは時間単位で付与することができます。従業員はプライベートな用事に充てることもでき小刻みに休みをとることで仕事が溜まってしまうということもないのでありがたいのですが、企業側は時間管理の手間がかかることもあるのでシステムなどとの連携が必要かもしれません。

計画年休制度……労使協定に基づいて企業側で計画的取得ができるもので一斉に又は部署ごとに夏季、年末年始休暇などに合わせて設定もできます。各人の付与日数の5日を超える日数について計画的に取得してもらうことができます。

働き方改革の年休時季指定……2019年4月から働き方改革の一環で休暇が10日以上付与されている従業員に年5日の有給休暇を時季指定しなくてはならなくなりました。本人が自分で取得した日や計画年休もこの5日に含まれるので、5日以上取得している方は対象ではありません。この時季指定を今まで本来休業日であった休暇に代えて5日の有給休暇に充てるのは法の趣旨に反するので労使でよく話し合って協定を交わし、就業規則に載せるのが良いでしょう。

新型コロナウイルスで仕事を休んだら 休業か欠勤か有給か?

2020-03-29

新型コロナウイルスで休業したら

突然、小中高の学校が休校になったり様々なイベントが中止になったり、感染症の対応に企業も大わらわという事態が生じています。厚生労働省の「新型コロナウイルスの企業向けQ&A」では、新型コロナとはわからない発熱などの症状があって労働者が自主的に休めば通常の病欠と同じ扱いになります。一方、37.5度以上の熱があるなどの理由で一律に休業させると事業主の判断があるときは一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を払う必要があるとしています。労使で言い出した方の責任というのも変な話ですが、労務の提供ということで見れば体調不良で仕事を休めば欠勤であり、労務の提供はできるが会社から休むように言われた場合は会社都合という扱いでしょう。

判断に迷う微熱

微妙なのは37度くらいの時の判断で労務の提供ができるといえばできるかもしれませんが厚労省の「新型コロナウイルスの対応に関する基本方針」でも「患者・感染者との接触機会を減らす観点から企業に対して発熱などの風邪症状がみられる職員等への休暇取得の勧奨、テレワークや時差出勤の推進等を強力に呼びかける」としています。今回のような感染症は非常事態なので企業が何らかのラインを引く必要があるかもしれません。発熱で労務の提供がなければ欠勤で無給か従業員の意思確認の上、有給休暇を使用するか、会社が特別休暇扱いにする時は給与の有無も決める必要があるでしょう。有給休暇がない人はどうするのか等の問題もありますが企業は柔軟に考え、今は拡大を阻止することが最重要でしょう。

休業手当の取り扱いは?

会社からの休業手当支払いはどのようになるでしょうか? 新型コロナウイルスでお客に突然キャンセルされた、来客が少なくなった、売り上げが大幅に落ちた等で社員を休ませなければならなくなった場合の休業手当(休業期間中平均賃金の60%の休業手当)は経営障害(不況、資金難、材料不足等)による休業にあたり、手当が必要でしょう。企業には痛手で影響も大きいので、これを受けて政府は、雇用調整助成金を休業手当の補填とする条件緩和の緊急討議をしています。助成金を利用することも視野に入れておきましょう。

賃金請求権(退職手当除く)の 消滅時効は当面3年に

2020-03-14

民法(債権法)の改正

労働基準法第115条は、賃金(退職手当を除く)、災害補償その他の請求権は2年間、退職手当の請求権は5年間の消滅時効を定めています。

2020年4月1日に施行される改正民法(第166条第1項)では、一般債権の消滅時効は次のいずれかとなります。

①債権者が権利を行使できることを知った時(主観的起算点)から5年間行使しないとき。

②権利を行使できる時(客観的起算点)から10年間行使しないとき。

従来、「使用人等の給与」等に設定されていた短期消滅時効が民法では廃止されますので、労働基準法の賃金請求権の消滅時効の取扱いがどうなるか注目されていました。

 

労働基準法の賃金請求権は当面3年に

厚生労働省は、通常国会に労働基準法改正案を提出し、賃金請求権の消滅時効は、客観的起算点から5年を原則とするものの、労働基準法第109条の記録保存期間に合わせて当分の間3年とし、5年後に必要に応じて見直すことになりそうです。

なお、退職手当の請求権の5年間、年次有給休暇取得の2年間の消滅時効に変更はありません。

 

未払賃金の遡及も最大3年に

労働基準監督官の臨検で未払賃金に関して是正勧告された場合、最大2年分の遡及払いを指導されていましたが、今回の改正で、さらに1年分多く遡及される可能性があります。

つまり、臨検で未払賃金の是正勧告を受けた場合や未払賃金に関する裁判で会社敗訴となった場合のリスクが1.5倍となるということです。

従来の2年遡及でも、企業にはかなりの痛手となっていましたので、遡及が最大3年となれば、会社の存続自体が危ぶまれるケースが増えてくるかもしれません。