12月, 2020年

職務分析・職務評価の導入支援

2020-12-23

同一労働同一賃金の実現に向けて

2020年4月1日にパートタイム・有期雇用労働法が施行され、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保が求められるようになりました。いわゆる「同一労働同一賃金」で、中小企業は2021年4月1日から適用されます。

この法改正は、同じ企業内における正社員と非正規雇用労働者との不合理な待遇差をなくすことを目的としています。では、この「不合理」とは、何を基準に判断するのでしょうか。

一つは、「均衡待遇」の観点です。これは、①職務内容(業務の内容+責任の程度)、②職務内容・配置の変更範囲(人事異動や役割の変化等の有無や範囲)、③その他の事情(職務の成果、能力、経験等)、を考慮した上での「均衡=バランス」のとれた待遇を意味します。このうち①と②が全く同じ場合には、「均等待遇」として差別的取り扱いが禁止されます。

待遇の範囲には、福利厚生や教育訓練なども含まれますが、やはり企業にとっても従業員にとっても影響が大きいのは賃金部分です。特に基本給について、どのように設計するかが難しいところですが、その手法として職務分析・職務評価の実施が推奨されています。

 

コンサルティングの活用を

職務分析とは、従業員それぞれの職務に関する情報を収集・整理し、職務内容を明確にすることです。その職務内容の大きさを点数化し、相対的に測定する手法が職務評価です。従業員の業務や能力を評価する人事評価とは異なり、いずれも職務そのものを分析し評価するものになります。

正社員と非正規雇用労働者を対象に、この二つを実施することで、「均衡待遇」および「均等待遇」を実現する賃金制度の設計が可能となりますが、実施には相応の労力がかかります。そのため、厚生労働省では導入支援として職務評価コンサルタントの無料派遣を行っています。

(⇒https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/estimation/

標準的な派遣回数は6回程度、全国どこでも利用可能です。まずは自社で検討したい、という場合には、こちらのサイトからマニュアルや評価ツールをご覧ください

辞めたいけれど言えない… “退職代行”サービスが人気の理由

2020-12-02

新入社員が、すぐ辞めてしまった!?

今年は、新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの企業が新年度の採用や研修などのスケジュールの大幅な変更を余儀なくされました。

今年度入社の新入社員も、例年行われている入社式や歓迎会など会社のイベントが中止になったり、入社当初から在宅勤務となったり、異例の事態に戸惑った人も多かったのではないでしょうか。

そんな中、今年入社の新入社員がもう辞めてしまったという企業もあるでしょう。

もっとも、大卒新入社員の3年以内の離職率は30%前後の状況がここ20年以上も続いており、今年に限った傾向ではありません。しかし、ここ最近になって新卒を含む20~30代の若者をメインに、退職の際に直接退職の意思を伝えることが難しい労働者に代わり、退職の意思伝達や処理、交渉(交渉は弁護士がいる場合のみ可能)を行ってくれる退職代行サービスの利用者が増えているというのです。

なぜ退職代行を使うのか

そもそも、期間の定めのない労働者はいつでも退職できることとなっており(民法627条)、会社を辞めるのに会社の許可は必要ありません。なのにどうして、代行会社を利用するのでしょうか。その理由として多いのは、次のようなものです。

退職を言い出せない。

ここから、従業員本人の退職の意思が固まっているのに企業側がそれを受け入れない状況が読み取れます。退職したくても言えない、言っても聞き入れてもらえないという思いが利用者側にあるようです。

企業側が備えるべきこと

原則として退職は労働者の自由であり、企業は本人の意思を受け入れて速やかに必要な手続きを行うべきです。

代行サービスにより、ある日突然社員が出社しなくなると、退職理由を聞くこともできない場合が多く、業務の引継ぎも難しくなります。

問題がこじれるのを防ぐためにも、一度は縁あって入社した労働者を、気持ちよく送り出せるような職場環境を整備することが求められます。

解雇予告手当の所得税と関連社会保険や労働保険の手続き

2020-12-02

解雇予告手当は退職所得

コロナ禍の収束が見えない中、雇用調整助成金の活用などで何とか凌いできた企業でも、後は人員削減しか手はないといった段階に進んでしまうところも少なくないものと危惧されます。新聞紙上でも、「○○社(=名の知れた大企業)で希望退職○○人募集へ」などといった記事が目につきます。

新型コロナウイルスの感染拡大による経営危機を理由に解雇やリストラが行われる場合も、通常の解雇と同様に、解雇(=それが正当な理由であることを前提とします)に際しては、使用者は30日前までに解雇日を予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わなければならないとされています。

退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与は「退職手当等」とされ、退職所得として課税されます。

退職所得の源泉徴収税額の計算等

退職手当等が発生する場合には、毎月の給与の所得税の源泉所得税とは別に、退職所得の源泉徴収税額の計算をしなければなりません。使用者は、従業員から「退職所得の受給に関する申告書」を提出してもらい、それに従って計算をします。

源泉徴収された退職所得にかかる所得税及び復興特別所得税も、原則として、翌月の10日までに納めなければなりません。退職手当等の支払をする者は、退職所得の源泉徴収票(同合計表)を退職の日以後1月以内(翌年1月31日でも可)に納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

その他退職時の社会保険等の一連の手続き

主に下記のような手続きが発生します。

(1)雇用主の手続き

①社会保険・・・「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を退職日の翌日から5 日以内に年金事務所(健康保険組合・厚生年金基金) に提出。本人に年金手帳を返還。

本人から家族分を含め健康保険証を回収。

②雇用保険・・・「雇用保険被保険者資格喪失届」を退職日の翌日から10日以内に公共職業安定所に提出。本人の希望により「離職票(被保険者離職証明書)」を添付。

③住民税・・・特別徴収に関し、必要な確認・徴収を行い、退職者の住民税の区市町村に「給与所得者異動届出書」を提出。

(2)退職者の手続き

健康保険証を返還し、年金手帳の返還を受ける。給与・退職所得の源泉徴収票を受領。希望する場合は「離職票」作成を依頼。